矢野憩啓 個展 『移行』
若手アーティスト支援プロジェクト「美大生&若手アーティスト協同プロジェクト“ゆるやかな繋がりはやがて確かなカタチを結ぶ”」。2021年第4弾は多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻の矢野憩啓さんです。
矢野はこれまで空間に対する自身の認識と存在をテーマに絵画を制作して いた。
それは単に視覚のみに基づいたものではなく、カンヴァスの外で起きる 立体的な身体の動きがを画面に線として残る際に起こる空間的な体感のズレ を、描くという行為ですり合わせてきた。
今回の展示では上記のような自身と空間との兼ね合いを含め、4 種類の絵 がある。反復する曲線の絵、太陽の絵、花の絵、自画像(+花としての自画 像)。この 4 種類の絵画を描く際に起こる、動作から画面(カンヴァス)への意 識の移行、空間から太陽への対象の移行、対象から関係への興味の移行をテ ーマとしている。
・「反復する曲線の絵」
動作から平面への意識の移行 自身の身体からでた反復する曲線を図像化し、デジタルを通して再度絵画に起こした作品。自身が存 在している世界で起こる身体の動きを絵に収める際に起こる実空間と絵画空間のズレを絵を描くことで すり合わせている。強くクレヨンを擦り付けて出来上がる画面は、デジタル的な画面へと繋がる。
・「太陽の絵」
空間から太陽への対象の移行 太陽の光がどのようにして自分まで届いているのか、空間に行き渡っているのかを観察や肌を通して 感じたうえで、自分と太陽との境、布と絵の境を探る試み。太陽が描かれている布は網膜であったり私 自身の肌なのかもしれない。布と絵具、絵と私、布とその後ろにあるもの(壁、床)の関係性を重視した 作品。 太陽から確保できる唯一の領域は自身の影なのかもしれない。
・「花の絵」
対象から関係への興味の移行 自身と自身に近しい人(家族、恋人)を花に見立て、その関係性からより自身を明確に捉え、絵の中で 自分の存在を確保する行為を描いた作品。何故その花に見立てたかの基準はそれぞれ別々の要素 から選んでいる、例えば恋人であれば、青に染められた頭髪から色を選んだ。そしてそれに対して自 分はオレンジであるというような決め方をしている。
・自画像としての花
秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず。自身を花に見立てる。 自画像 自身の顔を描く際、どのようになるかを見て、今の自分が何に侵食されているのかを描いた作品。この時、実家の犬が亡くなったため、自身の顔が犬のように変化したと推測される。
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